日本郵政の株価はなぜ安いのですか?
日本郵政株は危険ですか?買うべきですか?
「楽天株で850億円の損失を出した」という報道もあり心配です。
こういった質問に答えます。
こんにちは、ブロガー&投資家のフリーです。
今回は、「日本郵政の株価はなぜ安いのか?」「日本郵政株は危険なのか?」「日本郵政株は買うべきか?」を中心に解説します。
ポイントは下記のとおり。
- 日本郵政の株価が安い理由①:業績や配当に期待できない
- 日本郵政の株価が安い理由②:かんぽ生命の不正販売
- 日本郵政の株価が安い理由③:新規事業・成長投資の不振
- 日本郵政株は危険ではないが、積極的に買うべきではない
※記事は3分くらいで読み終わります。
日本郵政はどんな会社?
日本郵政(6178)は、日本郵政グループの持株会社。
日本郵便・ゆうちょ銀行(7182)・かんぽ生命保険(7181)が、おもな子会社です。
筆頭株主は財務大臣(財務省)で、発行済み株式数の3分の1強を保有。
売上構成は、生命保険57%、銀行19%、郵便・物流18%、国際物流5%で、純利益の75%をゆうちょ銀行が稼いでいます(2023年3月期)。
最近の報道では、楽天株で850億円もの損失を出し、「日本郵政株は危険では?」という報道もあり、投資家から注目(心配?)されています。
項目 | 内容 |
---|---|
社名 | 日本郵政 |
証券コード | 6178 |
本社 | 東京都千代田区大手町 |
設立 | 2006年1月 |
決算 | 3月31日 |
市場 | 東証プライム |
事業内容 | 郵便・物流、銀行、生命保険 |
従業員数(連結) | 約227,000名(2023年3月期) |
売上高 | 11兆1,385億円(2023年3月期) |
配当利回り | 4.64%(2023年3月期) |
株価 | 1,245.5円(2023年9月22日終値) |
購入できる証券会社 | 松井証券、楽天証券など |
日本郵政株は、ネット証券で購入するのが便利で、手数料もお得です。
松井証券の場合、1日の取引額が50万円以下であれば手数料は無料です。ぜひ、この機会に口座を開設しておきましょう。
日本郵政の業績推移と見通し
日本郵政の過去7期分の業績は、下記のとおりです。
決算期 | 売上高 | 経常利益 | 純利益 |
---|---|---|---|
2017年3月 | 13兆3,265億円 | 7,952億円 | -289億円 |
2018年3月 | 12兆9,203億円 | 9,161億円 | 4,606億円 |
2019年3月 | 12兆7,749億円 | 8,306億円 | 4,794億円 |
2020年3月 | 11兆9,501億円 | 8,644億円 | 4,837億円 |
2021年3月 | 11兆7,204億円 | 9,141億円 | 4,182億円 |
2022年3月 | 11兆2,647億円 | 9,914億円 | 5,016億円 |
2023年3月 | 11兆1,385億円 | 6,574億円 | 4,310億円 |
売上高は、一貫して減少が続いています。
郵便物の取り扱い量の減少や新規事業の不振、2019年に発覚した「かんぽ生命」の不正販売問題などが要因です。
経常利益は、増益と減益を繰り返していて、安定しませんが、おおむね8,000~9,000億台を稼いでいます。
ただし、直近の2023年3月期には、6,500億円まで減少しているのが懸念されます。
純利益については、2017年3月期にオーストラリア物流大手の減損損失で約4,000億円の特別損失を計上、最終赤字になりました。
それ以降は、おおむね4,000億円台を稼いでいます。
✓ 日本郵政の業績見通し
2024年3月期の日本郵政の業績見通しは、下記のとおり。
決算期 | 売上高 | 経常利益 | 純利益 |
---|---|---|---|
2024年3月(予想) | 10兆8,600億円 | 6,200億円 | 2,400億円 |
前期と比べて減収減益予想でよくありません。とくに純利益の落ち込みがひどく、45%ほどの減少になっています。
純利益の減少は、稼ぎ頭の「ゆうちょ銀行」株式の持ち分が減ること(89% → 60%)が要因です。
さらに、楽天株が通期決算(2024年3月期)に与える影響についても、懸念されます。
日本郵政の楽天株の取得価格が1,145円。
楽天株が取得価格の50%(573円)を下回ると、2024年3月期の通期決算に悪影響を与えかねません。
ちなみに、現在の楽天グループ(4755)の株価は、620.3円(2023年9月22日終値)。
現時点では、取得価格の50%を上回っており、通期(2024年3月期)での評価損計上はなさそうです。
日本郵政の株価推移
日本郵政の約8年分の株価推移は、下記のとおり。
※株価チャートは拡大できます。
日本郵政は、2015年11月に新規上場しました(公開価格:1,400円)。
上場来の最高値は、上場から1ヵ月後の2015年12月、1,999円です。
その後、日本郵政の株価は業績に比例するかのように、右肩下がりに…。
※2019年に発覚した「かんぽ生命」の不正販売問題も悪材料になりました。
2020年10月には、上場来安値の714.7円を記録しています。
2020年後半から、株価はゆるやかに回復。2023年9月現在、1,200円台で推移しています。
株価はようやく1,000円を超えて、1,200円台に乗せました。
ですが、いまだに公開価格(1,400円)を下回っています。
日本郵政の株価はなぜ安い?
日本郵政の株価が安い理由は、下記の3点が考えられます。
- 理由①:業績や配当に期待できない
- 理由②:かんぽ生命の不正販売
- 理由③:新規事業や成長投資が不振
それぞれ解説します。
理由①:業績や配当に期待できない
理由の1つ目は、業績や配当に期待できないからです。
業績については、先述したとおり。
売上高は減少傾向、利益面は不安定で、今後もあまり期待できそうにありません。
配当に関しては、下記をご覧ください。
決算期 | 配当金 |
---|---|
2017年3月 | 50円 |
2018年3月 | 57円 |
2019年3月 | 50円 |
2020年3月 | 50円 |
2021年3月 | 50円 |
2022年3月 | 50円 |
2023年3月 | 50円 |
特別配当を出した、2018年3月期以外は毎期50円の配当金です。
安定配当と言えるかも知れませんが、株主還元に積極的な企業が増えている中、何か物足りなさを感じます。
連続増配株に興味のある方は、こちらの記事もご覧ください。
理由②:かんぽ生命の不正販売
理由の2つ目は、かんぽ生命の不正販売があったからです。
2019年に子会社のかんぽ生命で、保険の不正販売問題が発覚。
2014年~2018年度に販売した18万件超の保険商品で、顧客に不利益を与えた可能性があるとして大問題になりました。
※郵便局員への「過剰なノルマ」が不正の原因だった…、と言われています。
この不正販売問題により、3ヵ月の業務停止命令を受け、経営トップは辞任。
株価も大きく反応し、2019年の夏頃から2020年10月にかけて、日本郵政株は下落していきます。
理由③:新規事業や成長投資が不振
理由の3つ目は、新規事業や成長投資が不振だからです。
2015年に買収した、オーストラリアの物流大手(トール・ホールディングス)への投資に失敗。
結局、2017年3月期に約4,000億円の特別損失を計上することになります。
また、直近の2024年3月期・第1四半期(4~6月期)の決算では、楽天株の下落を受けて850億円の特別損失を計上しています。
さらに、楽天グループとの合弁会社「JP楽天ロジスティクス」の売上高は627億円あるものの、純利益(最終利益)は、52億円の赤字(2023年3月期)となっています。
まだ2期目の新しい会社なので、性急な判断はできませんが、株式市場からは先行きを不安視する声も上がっています。
日本郵政の配当推移と見通し
日本郵政の配当金推移は、下記のとおり。
※配当利回り = 各期の配当金 ÷ 株価(期末)× 100で算出
決算期 | 配当金 | 株価(期末) | 配当利回り | 配当性向 |
---|---|---|---|---|
2017年3月 | 50円 | 1,397円 | 3.58% | - |
2018年3月 | 57円 | 1,281円 | 4.45% | 50.5% |
2019年3月 | 50円 | 1,296円 | 3.86% | 42.2% |
2020年3月 | 50円 | 845.7円 | 5.91% | 41.8% |
2021年3月 | 50円 | 986.7円 | 5.07% | 48.3% |
2022年3月 | 50円 | 898.4円 | 5.57% | 37.9% |
2023年3月 | 50円 | 1,076.5円 | 4.64% | 41.4% |
配当金は2018年3月期(※)を除いて、毎期50円が続いていて、株主還元に積極的とは言えません。
※日本郵政・民営化10周年の特別配当(7円)が追加され、57円。
株価が1,000円まで下がると、配当利回りが5%になるのですが、個人的にはあまり投資意欲が湧きません。
今後の業績に不透明感があり、投資対象としては考えにくいです。
✓ 日本郵政の配当見通し(2024年3月期)
2023年8月に発表された決算短信によると、2024年3月期の配当金は、50円のままのようです。
2024年3月期の決算は、減収減益予想で、純利益は半減するのですが、日本郵政は下記の配当方針を掲げているため、業績が多少悪くても、減配にはならない見込みです。
引用元:日本郵政 配当政策より
- 経営成績に応じた株主への利益還元を継続して安定的に行う
- 2026年3月期末までは、50円/1株を目安に、安定的な配当を目指す
日本郵政株は危険?or 買うべき?
「日本郵政株は危険か?」、「日本郵政株を買うべきか?」
あくまでも、個人的な意見ですが、
結論:日本郵政株は危険ではないが、積極的に買うべきではない
その理由は、「日本郵政の株価はなぜ安い?」で述べたとおり、
新規事業や成長投資が不振で、今後の業績や配当に期待できないからです。
最近の報道で、一番のトピックは、日本郵政が2023年3月にゆうちょ銀行の株式を売却したことです。
※この売却により、日本郵政が保有する「ゆうちょ銀行」の株式が89%から60%に減り、2024年3月期の純利益も45%ほど減少する見込みです。
純利益の75%を稼いでいた(2023年3月期)、ゆうちょ銀行株を手放すことは、大きな痛手となります。
今後、日本郵政は「金融」「郵便」に次ぐ、第3の柱として「不動産」事業に力を入れる計画(5,000億円を投資予定)ですが、どのように成長させるのかをじっくりと見守りたいと思います。
参考:日本郵政、不動産に大型投資 全国20カ所超で再開発(日本経済新聞)
なお、日本郵政株に興味のある方は、moomoo(ムームー)などの株アプリで会社の動向を定期的にチェックしましょう。
moomoo証券- 米株24時間取引・株価・投資情報
Moomoo Technologies Inc.無料posted withアプリーチ
※IDを取得すれば、無料ですぐに利用できます。
>>【moomoo】アプリの使い方とメリット、使ってみた感想を解説!
まとめ:今回のポイント
今回は、日本郵政は(6178)について解説しました。
ポイントをおさらいすると、下記のとおり。
- 日本郵政の株価が安い理由①:業績や配当に期待できない
- 日本郵政の株価が安い理由②:かんぽ生命の不正販売
- 日本郵政の株価が安い理由③:新規事業・成長投資の不振
- 日本郵政株は危険ではないが、積極的に買うべきではない
2023年3月、日本郵政は稼ぎ頭であった「ゆうちょ銀行」の株式を売却。持ち分比率が大きく減少しました。
この売却に伴い、2024年3月期の純利益がほぼ半減する見通しです。
日本郵政は現在、経営の大きなターニングポイントにきていると考えます。
「金融」「郵便」に次ぐ、第3の柱として「不動産」事業がどのように成長するのか、1~2年のスパンでじっくり見届けたいと思います。
※投資判断は自己責任でお願いします。
今回は以上です。