海運株の商船三井に興味があります。
2022年に株価が急落したことがありますが、なぜですか?
配当利回りが高い理由についても教えてください。
こういった質問に答えます。
こんにちは、ブロガー&投資家のフリーです。
今回は「商船三井の株価急落の理由」と「商船三井の配当利回りはなぜ高いのか?」を中心に解説します。
ポイントは下記のとおり。
- 株価急落の理由①:コンテナ船の運賃市況の悪化
- 株価急落の理由②:売却益狙いの利食い売りの増加
- 配当利回りが高い理由①:コロナ禍の特需で利益が激増
- 配当利回りが高い理由②:株主還元に積極的な経営方針
記事は3分くらいで読み終わります。ぜひ投資の参考にしてください。
商船三井はどんな会社?
商船三井(9104)は、日本郵船・川崎汽船と並ぶ日本の大手海運会社。
鉄鉱石や石炭などの資源輸送や自動車船、タンカー、LNG船に強みを持っています。
また、2018年4月に日本郵船などと事業統合したコンテナ船事業(ONE:オーシャン・ネットワーク・エクスプレス)が、ここ最近の稼ぎ頭になっています。
項目 | 内容 |
---|---|
社名 | 商船三井 |
証券コード | 9104 |
本社 | 東京都港区虎ノ門 |
設立 | 1884年5月 |
決算 | 3月31日 |
市場 | 東証プライム |
主な事業内容 | 製品輸送、資源・エネルギー輸送 |
従業員数(連結) | 約8,700名(2023年3月期) |
売上高 | 1兆6,119億円(2023年3月期) |
配当利回り | 16.92%(2023年3月期) |
株価 | 3,975円(2023年8月7日終値) |
購入できる証券会社 | 松井証券 、楽天証券 など |
商船三井株は、ネット証券で購入するのが便利で、手数料もお得です。
松井証券の場合、1日の取引額が50万円以下であれば手数料が無料です。ぜひこの機会に口座を開設しておきましょう。
商船三井の株価急落の理由とは?
まずは、商船三井の株価チャートをご覧ください。
※株価チャートは拡大できます。
2023年に入ってから、株価はほぼ安定していますが、2022年の秋口には、株価が20%も下落した局面がありました。
今後の株価を考える際にも参考になると思いますので、2022年に商船三井の株価が急落した理由を解説します。
※参考:会社四季報オンライン
- 理由①:コンテナ船の運賃市況の悪化
- 理由②:売却益狙いの利食い売りの増加
少し解説を加えます。
理由①:コンテナ船の運賃市況の悪化
理由の1つ目は、コンテナ船の運賃市況の悪化です。
2022年の夏、コンテナ船の国際的な運賃指標「上海輸出コンテナ運賃指数」が約8%下落し、2020年11月以来、1年9ヵ月ぶりの低水準になりました。
コンテナ船の事業(ONE)が大きな収益源である商船三井の利益も、今後は減少すると判断され、株が売られたものと考えます。
理由②:売却益狙いの利食い売りの増加
理由の2つ目は、売却益狙いの利食い売りの増加です。
商船三井のように株価が大きく上昇した銘柄には、短期的な資金が流入することも多く、株価が高値にある内に利食い売りをする投資家が増えます。
また、極端な高配当が、投資家の警戒感を呼んだとも考えます。
具体的には、9月末の中間配当を控えて、配当落ちによる株価下落を警戒した、一部の投資家があらかじめ利益を確保する目的で、株を売ったと推測します。
※ちにみに、2022年9月の商船三井の中間配当金は、300円/1株 と高額でした。
✓ 商船三井の過去5期分の業績と今後の見通し
商船三井の過去5期分の業績と、2024年3月期の業績見通しを載せましたので、投資の参考にしてください。
※2022年4月に実施された株式分割(1株 → 3株)を考慮して作成
決算期 | 売上高 | 営業利益 | 純利益 |
---|---|---|---|
2019年3月 | 1兆2,340億円 | 377億円 | 268億円 |
2020年3月 | 1兆1,554億円 | 237億円 | 326億円 |
2021年3月 | 9,914億円 | -53億円 | 900億円 |
2022年3月 | 1兆2,693億円 | 550億円 | 7,088億円 |
2023年3月 | 1兆6,119億円 | 1,087億円 | 7,960億円 |
2024年3月(会社予想) | 1兆5,300億円 | 1,000億円 | 2,150億円 |
上記の業績をチェックすると、2022年と23年の当期純利益が異常に多いことがわかります。
コロナ禍の特需による、コンテナ船事業の利益拡大が大きな要因です。
商船三井が発表している、2024年3月期の純利益は2,150億円と、前期に比べて4分の1くらいに減る予想なので、注意が必要です。
商船三井、過去20年の株価推移
参考までに、商船三井の過去20年分の株価チャートを載せておきました。
※株価チャートは拡大できます。
ご覧のとおり、2000年代前半にも株価の急騰と急落を演じています。
その後、2010年代は1,000円台のボックス相場に移行。コロナ特需が発生するまでは、あまり人気のない銘柄でした…。
ここで、海運株の特徴を2つほど記載しておきます。
- 特徴①:株価の安定的な上昇は期待できない
- 特徴②:低迷期に入ると保有していもメリットが少ない
株価チャートを見ればわかりますが、成長株や優良株のような右肩上がりの株価上昇は期待できません。
日本や世界経済の動向をまともに受ける、典型的な景気敏感株なので、一般人には投資しずらい銘柄の1つです。
また、低迷期に入ると、株価はボックス相場での値動きに終始するので、売却益を狙うのが非常に困難です。
さらに、低迷期(= 業績悪化)には配当金も少なくなるので、思ったような配当利回りを確保できないことも、海運株の難しい点です。
商船三井の配当利回りはなぜ高い?
商船三井の2023年3月期の配当金は、下記のとおり。
時期 | 配当金 |
---|---|
中間配当(2022年9月) | 300円 |
期末配当(2023年3月) | 260円 |
合 計 | 560円 |
2023年3月末の株価は3,310円。
配当利回りを計算すると、「16.92%」と驚くほどの高利回りです。
東証プライム全銘柄の平均利回りは、2.26%(2023年8月7日、日本経済新聞より)なので、約7.5倍です!
100株を保有している場合、56,000円の配当金を受け取ることができました。
※なお、実際の手取り額は 44,624円(20.315%の所得税・住民税が引かれる)です。
配当金の額は、業績によって変化します。moomoo(ムームー)などの株アプリで、会社の動向をウォッチしていきましょう。
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商船三井の配当利回りが高い理由
商船三井の配当利回りが高い理由は、下記の2点が考えられます。
- 理由①:コロナ禍の特需で利益が激増
- 理由②:株主還元に積極的な経営方針
理由の1つ目は、コロナ禍の特需の影響で、利益が激増したからです。
コロナウィルスが原因で、港湾の人手不足が発生。それによって物を運ぶ主体が減ったことで運賃が高騰し、海運会社の利益が一時的に膨らみました。
このことは、コロナの影響を受けていない2020年3月期と直近(2023年3月期)の業績を比較すれば、明らかです。
決算期 | 売上高 | 純利益 | 配当金 |
---|---|---|---|
2020年3月 | 1兆1,554億円 | 326億円 | 21.7円 |
2023年3月 | 1兆6,119億円 | 7,960億円 | 560円 |
2023年3月期は、2020年に比べて、純利益(配当金の原資)が約24倍に増えています。
いかに、ここ数年のコロナ特需が異常だったかがわかります。
理由の2つ目は、株主還元に積極的な経営方針を取っていることです。
この点に関しては素直に評価すべきものと考えます。
2023年度~2025年度については、当社の企業価値及び財務体質が向上したことに伴い、連結配当性向を2022年度の25%から30%に引き上げ、業績に連動した配当を行います。加えて下限配当を導入し、海運市況サイクルの低位時に配当額が過少となることを防ぎます。
引用元:商船三井 IR情報、配当方針より
上記の配当方針のように、2024年3月期~2026年3月期(= 2023年度~2025年度)にかけては、配当性向を30%に引き上げることを表明しています。
2024年3月期以降は、配当金の原資である当期純利益の減少が見込まれている(=コロナ禍での特需がなくなる)ので、この点は少し安心材料です。
決算期 | 売上高 | 純利益 | 配当金 |
---|---|---|---|
2024年3月(会社予想) | 1兆5,300億円 | 2,150億円 | 180円 |
商船三井:配当金&配当利回りの推移
商船三井の配当金・配当利回りの推移(過去10期分)は、下記のとおり。
※配当利回り= 配当金 ÷ 株価(期末)× 100 で算出
決算期 | 配当金 | 株価(期末) | 配当利回り | 配当性向 |
---|---|---|---|---|
2014年3月 | 16.7円 | 1,340円 | 1.25% | 10.4% |
2015年3月 | 23.3円 | 1,360円 | 1.71% | 19.8% |
2016年3月 | 16.7円 | 763.3円 | 2.19% | - |
2017年3月 | 6.7円 | 1,166.7円 | 0.57% | 45.5% |
2018年3月 | 6.7円 | 1,020円 | 0.66% | - |
2019年3月 | 15円 | 793.7円 | 1.89% | 20% |
2020年3月 | 21.7円 | 582.3円 | 3.73% | 23.8% |
2021年3月 | 50円 | 1,291.7円 | 3.87% | 19.9% |
2022年3月 | 400円 | 3,420円 | 11.7% | 20.3% |
2023年3月 | 560円 | 3,310円 | 16.92% | 25.4% |
ここ1、2年、高配当株として人気がある商船三井ですが、配当利回りの推移をみると、実際に高配当なのは2022年と23年の2期だけということがわかります。
ちなみに、2024年の予想配当金は180円。現在の株価水準(4,000円前後)で購入できれば、4.5%くらいの利回りは確保できそうです。
商船三井100株はいくらで買える?
株価チャート(短期)を再掲します。
※株価チャートは拡大できます。
商船三井100株を購入する場合、下記で計算できます。
株価 × 100株 + 手数料 = 購入資金
2023年8月7日の商船三井の終値は、3,975円なので、これで計算してみます。
ちなみに、私も利用している松井証券の場合、50万円までの取引なら、手数料は無料となっています。
3,975円 × 100株 + 0円 = 397,500円
おおよそ40万円で購入可能です。
2022年4月に株式分割するまでは、100株購入するのに、100万円以上必要でした。
なので、金額的には手の届く銘柄になったと言えるでしょう。
それでは、「商船三井株は今、買い時なのか?」を以下で考察してみます。
商船三井の株は、買い時なのか?
まずは、結論から。
結論:商船三井の株は、買わないほうがいい。
その理由は、下記のとおり。
- 理由①:今後は景気後退になる可能性がある
- 理由②:海運株は景気敏感株で、投資が難しい
- 理由③:高配当狙いなら、他の銘柄を選ぶほうが良い
✓ 理由①:今後は景気後退になる可能性がある
参考までに、世界銀行の最新の「世界経済見通し」を引用しておきます。
世界的な金利上昇が継続する中、世界の経済成長は急激に減速し、新興市場・途上国の金融ストレスが激化している。
世界経済の成長率は2022年の3.1%から2023年は2.1%に低下すると予測される。中国を除く新興市場・途上国では成長率が昨年の4.1%から今年は2.9%に後退する見通しだ。これらの予測は世界各国で幅広く起きている減速を反映している。
引用元:世界銀行
また、高成長を続けてきた中国経済も、不動産バルブの崩壊や地方政府の債務問題などを抱えており、世界経済をさらに下押しする要因になるのではと懸念されています。
✓ 理由②:海運株は景気敏感株で、投資が難しい
論より証拠。
商船三井の過去5期分の業績と今期の業績予想を再掲します。
決算期 | 売上高 | 営業利益 | 純利益 |
---|---|---|---|
2019年3月 | 1兆2,340億円 | 377億円 | 268億円 |
2020年3月 | 1兆1,554億円 | 237億円 | 326億円 |
2021年3月 | 9,914億円 | -53億円 | 900億円 |
2022年3月 | 1兆2,693億円 | 550億円 | 7,088億円 |
2023年3月 | 1兆6,119億円 | 1,087億円 | 7,960億円 |
2024年3月(会社予想) | 1兆5,300億円 | 1,000億円 | 2,150億円 |
売上高に関しては、おおむね1兆数千億円を稼いでいますが、営業利益に関しては増益と減益を繰り返しています。
また、2022年と23年の当期純利益は、コロナ禍の特需によって、コンテナ船の事業(ONE)からの利益が大幅に増えたもので、あくまでも例外的な数字です。
2024年3月期(予想)は、売上高が少し減少。
当期純利益に至っては、4分の1に減ります。
✓ 理由③:高配当狙いなら、他の銘柄を選ぶほうが良い
ここ数年、高配当株の印象が強い商船三井ですが、長い間、株式投資に関わっている私にとって海運株は、
- 業績が大きく上下にブレる景気敏感株
- 海運業は成熟産業で投資妙味が少ない
という認識です。
唯一、投資できるポイントが「高配当」ということだと思いますが、高配当を狙うなら、もっと安心・安全に投資できる銘柄があります。
私がおすすめするのは、三菱HCキャピタル(8593)や三菱UFJフィナンシャル・グループ(8306)などの金融株です。
いずれも、 海運株に比べて業績が安定しており、かつ、4~5%の配当利回りを狙えます。
>> 三菱UFJの株価が安い理由(なぜ安い?)と株価・配当の見通し
まとめ:今回のポイント
今回は、商船三井(9104)について解説しました。
ポイントをおさらいすると、下記のとおり。
- 株価急落の理由①:コンテナ船の運賃市況の悪化
- 株価急落の理由②:売却益狙いの利食い売りの増加
- 配当利回りが高い理由①:コロナ禍の特需で利益が激増
- 配当利回りが高い理由②:株主還元に積極的な経営方針
2023年7月19日の日本経済新聞によると、商船三井の個人株主数は31.6万人で、1年前から22.1万人も増加。増加数は上場企業の中でNo.1だったようです。
ですが、これはあくまでも過去の話。今から商船三井の株主になるのは、かなりリスキーだと個人的には判断します。
日本の上場企業は約3,900社あり、「高配当株」も多数存在します。
これからも個別株の記事をたくさん書いていきますので、当ブログを引き続きよろしくお願いいたします。
※投資の判断は、自己判断でお願いします。
今回は以上です。