日本郵船の株価は、なぜあんなに上がるのですか?
また、2022年9月には株価が20%くらい下がりましたが、なぜですか?
こういった質問に答えます。
こんにちは、ブロガー&投資家のフリーです。
今回は、「日本郵船の株価はなぜ上がる?」「日本郵船の株価はなぜ下がる?」「日本郵船の配当金はいくらもらえる?」の3点を中心に解説します。
ポイントは下記のとおり。
- 日本郵船の株価上昇の理由①:コロナ禍での業績の急拡大
- 日本郵船の株価上昇の理由②:大幅な増配で配当利回り10%超え
- 日本郵船の株価下落の理由①:コンテナ船の運賃市況の悪化
- 日本郵船の株価下落の理由②:減配を嫌気した投資家の売り
- 日本郵船の予想配当金は130円(2024年3月期)
※記事は3分くらいで読み終わります。
日本郵船はどんな会社?
日本郵船(9101)は、海運業で国内No.1。三菱グループの発祥企業でもあります。
不定期専用船(ばら積み船、自動車船等)が売上の約50%を占めていて、最近の決算ではコンテナ船(ONE:オーシャン・ネットワーク・エクスプレス)が稼ぎ頭になっています。
さらに、郵船ロジスティクスを傘下に所有し、「海運・物流」の両分野でバランス良く稼いでいる企業です。
項目 | 内容 |
---|---|
社名 | 日本郵船 |
証券コード | 9101 |
本社 | 東京都千代田区丸の内 |
設立 | 1885年9月 |
決算 | 3月31日 |
市場 | 東証プライム |
主な事業内容 | 不定期専用船、コンテナ船、物流 |
従業員数(連結) | 約35,000名(2023年3月期) |
売上高 | 2兆6,160億円(2023年3月期) |
配当利回り | 16.83%(2023年3月期) |
株価 | 3,921円(2023年9月8日終値) |
購入できる証券会社 | 松井証券 、楽天証券 など |
日本郵船は、ネット証券で購入するのが便利で、手数料もお得です。
松井証券の場合、1日の取引額が50万円以下であれば手数料が無料です。ぜひ、この機会に口座を開設しておきましょう。
日本郵船の業績推移
日本郵船の業績推移(過去8期分)と、2024年3月期の業績予想は下記のとおりです。
決算期 | 売上高 | 営業利益 | 純利益 |
---|---|---|---|
2016年3月 | 2兆2,723億円 | 489億円 | 182億円 |
2017年3月 | 1兆9,238億円 | -180億円 | -2,657億円 |
2018年3月 | 2兆1,832億円 | 278億円 | 201億円 |
2019年3月 | 1兆8,293億円 | 110億円 | -445億円 |
2020年3月 | 1兆6,683億円 | 386億円 | 311億円 |
2021年3月 | 1兆6,084億円 | 715億円 | 1,392億円 |
2022年3月 | 2兆2,807億円 | 2,689億円 | 1兆91億円 |
2023年3月 | 2兆6,160億円 | 2,963億円 | 1兆125億円 |
2024年4月(予想) | 2兆1,700億円 | 1,460億円 | 2,200億円 |
売上高は、ある程度の増減はあるものの、1兆7,000億円~2兆3,000億円くらいで推移しています。
ですが、営業利益と純利益はブレ幅が大きく、増益と減益を繰り返しており、赤字を出している決算期もあります。
2022年と2023年3月期の利益額が異常に大きいのは、コロナ禍での需給ひっ迫でコンテナ船の利益が急増したからです。
一方、2017年3月期の2,657億円の最終赤字は、市況低迷の長期化により、保有する船などの減損損失を計上したためです。
2024年3月期は、営業利益は半減、純利益は5分の1になる見通し(会社発表)なので、要注意です。
海運株はこのように業績のブレ幅が大きく、投資の際には十分な注意が必要です。
日本郵船の株価はなぜ上がる?
日本郵船の株価チャート(直近5年分)をご覧ください。
※株価チャートは拡大できます。
2018年から2020年までは、400円~800円のボックス圏で株価は推移。
2021年の春先から株価は上昇局面に…。2022年3月には、高値4,163円を記録しました。
日本郵船の株価が上昇した理由は、下記の2点が考えられます。
- 理由①:コロナ禍での業績の急拡大
- 理由②:大幅な増配で配当利回り10%超え
少し解説を加えます。
理由①:コロナ禍での業績の急拡大
理由の1つ目は、コロナ禍での業績の急拡大です。
コロナ特需が発生する前後の業績を載せておきます。
決算期 | 売上高 | 営業利益 | 純利益 |
---|---|---|---|
2020年3月 | 1兆6,683億円 | 386億円 | 311億円 |
2021年3月 | 1兆6,084億円 | 715億円 | 1,392億円 |
2022年3月 | 2兆2,807億円 | 2,689億円 | 1兆91億円 |
2023年3月 | 2兆6,160億円 | 2,963億円 | 1兆125億円 |
日本国内で新型コロナの緊急事態宣言が出たのが、2020年4月。
当初は経済も一時的にストップしましたが、その後徐々に回復。経済の再開とともに物流も動きだし、港湾関係者の人手不足などを背景に需給がひっ迫。
とくにコンテナ船の船料が大幅に増加し、日本郵船の業績も2022年3月期(2021年4月~2022年3月)から急拡大へ…。
参考:日本郵船 海運市況
株価も業績拡大を見越して、2021年の3月頃から上昇を始めました。
理由②:大幅な増配で配当利回り10%超え
理由の2つ目は、大幅な増益で配当利回り10%超え、です。
まずは、日本郵船の過去4期分の配当推移をご覧ください。
決算期 | 配当金 | 株価(期末) | 配当利回り |
---|---|---|---|
2020年3月 | 13.3円 | 428.7円 | 3.10% |
2021年3月 | 66.7円 | 1,258.3円 | 5.30% |
2022年3月 | 483.3円 | 3,586.7円 | 13.47% |
2023年3月 | 520円 | 3,089円 | 16.83% |
2020年3月期に13.3円だった配当金は、「66.7円 → 483.3円 → 520円」と信じられないくらいの増配になりました。
これに伴い、配当利回りも急上昇! 3.1%だったものが、「5.3% → 13.5% → 16.8%」と超高利回りな銘柄に…。
配当狙いの投資家が殺到し、株価が上昇しました。
ちなみに、日本郵船の2023年3月末の個人株主数は29.3万人。前年から16.3万人も増加しています(2023年7月19日、日本経済新聞より)。
日本郵船の株価はなぜ下がる?
まずは、先ほどの株価チャートを再掲します。
※株価チャートは拡大できます。
2021年に入ってから、ボックス圏を抜け出し上昇傾向にあった日本郵船株ですが、2021年9月と2022年9月には20%以上も株価が暴落しました。
ここからは、日本郵船の株価が下落した理由を考察していきます。
日本郵船の株価が下落した理由は、下記の2点が考えられます。
- 理由①:コンテナ船の運賃市況の悪化
- 理由②:減配を嫌気した投資家の売り
それぞれ解説します。
理由①:コンテナ船の運賃市況の悪化
理由の1つ目が、コンテナ船の運賃市況の悪化です。
下記は、中国コンテナ船運賃指数です。
※拡大してご覧ください。
2020年後半から上昇したコンテナ船の運賃は、2021年を頂点として、それ以降はピークアウト。
中国コンテナ船運賃指数やバルチック海運指数の下落は、日本郵船などの海運株の下落をもたらします。
その理由は、これらの指標が景気より先行して動くからです。
したがって、コンテナ船運賃指数などが下落すれば、その後の業績にも悪影響を及ぼします。
2021年9月と2022年9月の株価暴落は、コンテナ船の運賃市況の悪化を嫌気した投資家の売りが原因と考えます。
参考:会社四季報オンライン
理由②:減配を嫌気した投資家の売り
理由の2つ目は、減配を嫌気した投資家の売りです。
コロナ禍での日本郵船の配当推移と、2024年3月期の予想配当金は下記のとおり。
決算期 | 配当金 | 株価(期末) | 配当利回り |
---|---|---|---|
2020年3月 | 13.3円 | 428.7円 | 3.10% |
2021年3月 | 66.7円 | 1,258.3円 | 5.30% |
2022年3月 | 483.3円 | 3,586.7円 | 13.47% |
2023年3月 | 520円 | 3,089円 | 16.83% |
2024年3月(予想) | 130円 | - | - |
コロナ特需に沸き、好調だった配当についても潮目が変わり始めています。
コンテナ船の運賃市況が悪化すれば、そう遠くない時点で日本郵船の業績も悪化。
2024年3月期の配当金は130円と、前期に比べて4分の1になる予想(会社発表)で、大幅な減配になりそうです。
2022年9月の株価の大幅安は、減配を嫌った投資家の売りが一因と考えます。
日本郵船の株価は、今後も業績と配当の動向しだいで上下に大きく変動しそうです。
日本郵船の配当利回りは何%?
日本郵船の配当利回り(過去8期分)は、0%~16.83%と大きなブレがあり、安定的な配当は得にくい銘柄です。
ちなみに、東証プライム全銘柄の利回りは、2.20%(2023年9月8日、日本経済新聞より)。投資をする際の目安にしてください。
※配当利回り= 各期の配当金 ÷ 株価(期末)× 100で算出
※2022年10月に実施された、株式分割(1株 → 3株)を考慮して作成
決算期 | 配当金 | 株価(期末) | 配当利回り | 配当性向 |
---|---|---|---|---|
2016年3月 | 20円 | 723.3円 | 2.77% | 55.8% |
2017年3月 | 0円 | 783.3円 | 0% | - |
2018年3月 | 10円 | 716円 | 1.40% | 25.1% |
2019年3月 | 6.7円 | 540.7円 | 1.24% | - |
2020年3月 | 13.3円 | 428.7円 | 3.10% | 21.7% |
2021年3月 | 66.7円 | 1,258.3円 | 5.30% | 24.3% |
2022年3月 | 483.3円 | 3,586.7円 | 13.47% | 24.3% |
2023年3月 | 520円 | 3,089円 | 16.83% | 26.1% |
まずは、2016年3月期~2020年3月期までの配当金と配当利回りをご覧ください。
「日本郵船」と聞くと高配当株というイメージがあるかもしれませんが、配当金が0円だったり、配当利回りも1~2%台のケースが結構ある銘柄です。
4~5%の安定的な利回りを狙える株ではないことがわかります。
10%を超える高利回りは、2022年&2023年3月期で終了しており、今から高配当を求めて同社株に投資するのは危険だと考えます。
日本郵船100株で配当金はいくらもらえる?
日本郵船の2023年3月期の配当金は、下記のとおりでした。
※2022年の株式分割(1株 → 3株)を考慮して作成
時期 | 配当金 |
---|---|
中間配当(2022年9月) | 350円 |
期末配当(2023年3月) | 170円 |
合 計 | 520円 |
上記のとおり、日本郵船の配当金は、2回に分けて分配されます。
100株を保有している場合、52,000円の配当金を受け取ることができました。
※なお、実際の手取り額は41,437円(20.315%の所得税・住民税が引かれる)です。
配当金の額は、業績によって大きく変化します。moomoo(ムームー)などの株アプリで、企業の動向をチェックしましょう。
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✓ 日本郵船の予想配当金(2024年3月期)
日本郵船の2024年3月期の予想配当金は、下記のとおり。
※日本郵船が2023年11月に公表した決算短信より作成
時期 | 配当金 |
---|---|
中間配当(2023年9月) | 60円 |
期末配当(2024年3月) | 70円 |
合 計 | 130円 |
また、日本郵船の配当方針は下記のとおりです。
引用元:日本郵船 中期経営計画2026
- 配当性向目安を従来の25%から30%へ引き上げ
- 1株当たり配当下限額を100円に引き上げ
今期(2024年3月期)の予想配当金は130円と、前期(2023年3月期)の520円と比べて大幅な減配となりました。
減配の要因は、配当金の原資となる当期純利益が1兆円から2,000億円へと、5分の1になる予想だからです。
配当性向を従来よりも引き上げるなどの努力はしているようですが、もはや利回り10%を超える高配当株ではなくなってしまいました。
コロナ特需に沸いた、2022年&2023年3月期が異常な決算だったと言えそうです…。
ちなみに、2023年9月8日の終値が3,921円なので、予想配当利回りは3.32%(130円 ÷ 3,921円 × 100)です。
日本郵船100株はいくらで買える?
日本郵船の直近1年の株価推移は、下記のとおり。
※株価チャートは拡大できます。
日本郵船100株を購入する場合、下記で計算できます。
株価 × 100株 + 手数料 = 購入資金
2023年9月8日の日本郵船の終値は、3,921円なので、これで計算してみます。
なお、私も利用している松井証券の場合、50万円までの取引なら、手数料は無料となっています。
3,921円 × 100株 + 0円 = 392,100円
40万円あれば、100株購入できます。
2022年10月に株式分割するまでは、100株購入するのに、100万円以上必要でした。
なので、金額的には十分に手の届く銘柄になりました。
まとめ:今回のポイント
今回は、日本郵船(9101)について解説しました。
ポイントをおさらいすると、下記のとおり。
- 日本郵船の株価上昇の理由①:コロナ禍での業績の急拡大
- 日本郵船の株価上昇の理由②:大幅な増配で配当利回り10%超え
- 日本郵船の株価下落の理由①:コンテナ船の運賃市況の悪化
- 日本郵船の株価下落の理由②:減配を嫌気した投資家の売り
- 日本郵船の予想配当金は130円(2024年3月期)
2023年10月、日本郵船は子会社の日本貨物航空を、ANAホールディングス(9202)に売却するとのこと。
航空貨物はコンテナ船と同様、市況による利益の変動幅が大きいことが理由のようです。
「陸・海・空」の3分野で総合物流企業を目指している日本郵船にとっては大きな決断だったと思いますが、経営上のリスクが1つ減ったことはプラスに考えたいと思います。
これからも、日本郵船の動向はウォッチし続けますので、新しい動きがあれば記事にしていきます!
※投資の判断は自己責任でお願いします。
今回は以上です。