商船三井の株価が急落したことがありましたが、なぜですか? 配当利回りが高い理由についても教えてください。
こういった質問に答えます。
こんにちは、ブロガー&投資家のフリーです。
今回は「商船三井の株価急落の理由とは?」「商船三井の配当利回りはなぜ高い?」を中心に解説します。
ポイントは下記のとおり。
- 株価急落の理由①:コンテナ船の運賃市況の悪化
- 株価急落の理由②:売却益狙いの利食い売りの増加
- 配当利回りが高い理由①:コロナ禍の特需で利益が激増
- 配当利回りが高い理由②:株主還元に積極的な経営方針
※記事は2~3分で読み終わります。
商船三井はどんな会社?
商船三井(9104)は、日本郵船・川崎汽船と並ぶ日本の大手海運会社。
鉄鉱石や石炭などの資源輸送や自動車船、タンカー、LNG船に強みを持っています。
また、2018年4月に日本郵船などと事業統合したコンテナ船事業(ONE:オーシャン・ネットワーク・エクスプレス)が、ここ最近の稼ぎ頭になっています。
項目 | 内容 |
---|---|
社名 | 商船三井 |
証券コード | 9104 |
本社 | 東京都港区虎ノ門 |
設立 | 1884年5月 |
決算 | 3月31日 |
市場 | 東証プライム |
主な事業内容 | 製品輸送、資源・エネルギー輸送 |
従業員数(連結) | 約9,800名(2024年3月期) |
売上高 | 1兆6,279億円(2024年3月期) |
配当利回り | 4.77%(2024年3月期) |
株価 | 4,820円(2024年10月4日終値) |
購入できる証券会社 | 松井証券、moomoo証券 など |
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商船三井の株価急落の理由とは?
まずは、商船三井の株価チャートをご覧ください。
※株価チャートは拡大できます。
2023年に入ってから、株価はほぼ安定していますが、2022年の秋口には、株価が20%も下落した局面がありました。
今後の株価を考える際にも参考になると思いますので、2022年に商船三井の株価が急落した理由を解説します。
参考:商船三井など大手海運株が軒並み安、運賃下落に警戒感も(会社四季報オンライン)
- 理由①:コンテナ船の運賃市況の悪化
- 理由②:売却益狙いの利食い売りの増加
少し解説を加えます。
理由①:コンテナ船の運賃市況の悪化
理由の1つ目は、コンテナ船の運賃市況の悪化です。
2022年の夏、コンテナ船の国際的な運賃指標「上海輸出コンテナ運賃指数」が約8%下落し、2020年11月以来、1年9ヵ月ぶりの低水準になりました。
コンテナ船の事業(ONE)が大きな収益源である商船三井の利益も、今後は減少すると判断され、株が売られたものと考えます。
理由②:売却益狙いの利食い売りの増加
理由の2つ目は、売却益狙いの利食い売りの増加です。
商船三井のように株価が大きく上昇した銘柄には、短期的な資金が流入することも多く、株価が高値にある内に利食い売りをする投資家が増えます。
また、極端な高配当が、投資家の警戒感を呼んだとも考えられます。
具体的には、9月末の中間配当を控えて、配当落ちによる株価下落を警戒した、一部の投資家があらかじめ利益を確保する目的で、株を売ったと推測します。
※ちにみに、2022年9月の商船三井の中間配当金は、300円/1株 と高額でした。
✓ 商船三井の業績(過去5期分)と今後の見通し
商船三井の業績(過去5期分)と、2025年3月期の業績見通しを載せましたので、投資の参考にしてください。
※2022年4月の株式分割(1株 → 3株)を考慮して作成
決算期 | 売上高 | 営業利益 | 純利益 |
---|---|---|---|
2020年3月 | 1兆1,554億円 | 237億円 | 326億円 |
2021年3月 | 9,914億円 | -53億円 | 900億円 |
2022年3月 | 1兆2,693億円 | 550億円 | 7,088億円 |
2023年3月 | 1兆6,119億円 | 1,087億円 | 7,960億円 |
2024年3月 | 1兆6,279億円 | 1,031億円 | 2,616億円 |
2025年3月(予想) | 1兆8,150億円 | 1,560億円 | 3,350億円 |
上記のとおり、2022年と2023年3月期の純利益が異常に多いことがわかります。
コロナ禍の特需による、コンテナ船事業の利益拡大が大きな要因です。
2024年3月期以降の業績も、順調に推移しています。
ですが、コロナ禍のようなバブルは当分なさそうです。
商船三井の株価推移(過去20年分)
参考までに、商船三井の株価チャート(過去20年分)を載せておきました。
※株価チャートは拡大できます。
ご覧のとおり、2000年代前半にも株価の急騰と急落を演じています。
その後、2010年代は1,000円台のボックス相場に移行。コロナ特需が発生するまでは、あまり人気のない銘柄でした…。
ここで、海運株の特徴を2つ記載しておきます。
- 特徴①:株価の安定的な上昇は期待できない
- 特徴②:低迷期に入ると保有していもメリットが少ない
株価チャートを見ればわかりますが、成長株や優良株のような右肩上がりの株価上昇は期待できません。
日本や世界経済の動向をまともに受ける、典型的な景気敏感株なので、個人投資家には保有しずらい銘柄の1つです。
また、低迷期に入ると、株価はボックス相場での値動きに終始するので、売却益を狙うのが非常に困難です。
さらに、低迷期(= 業績悪化)には配当金も少なくなるので、思ったような配当利回りを確保できないことも、海運株の難しい点です。
商船三井の配当利回りはなぜ高い?
商船三井の2024年3月期の配当金は、下記のとおり。
時期 | 配当金 |
---|---|
中間配当(2023年9月) | 110円 |
期末配当(2024年3月) | 110円 |
合 計 | 220円 |
2024年3月末の株価は4,610円。
配当利回りを計算すると、「4.77%」とかなりの高利回りです。
東証プライム全銘柄の平均利回りは、2.30%(2024年10月4日、日本経済新聞より)なので、約2倍です。
100株を保有している場合、22,000円の配当金を受け取ることができました。
※なお、実際の手取り額は 17,531円(20.315%の所得税・住民税が引かれる)です。
配当金の額は、業績によって変化します。moomoo(ムームー)などの株アプリで、会社の動向を常にウォッチしましょう!
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>>【moomoo】アプリの使い方とメリット、使ってみた感想を解説!
商船三井の配当利回りが高い理由
商船三井の配当利回りが高い理由は、下記の2点が考えられます。
- 理由①:コロナ禍の特需で利益が激増
- 理由②:株主還元に積極的な経営方針
理由の1つ目は、コロナ禍の特需の影響で、利益が激増したからです。
コロナウィルスが原因で、港湾の人手不足が発生。それによって物を運ぶ主体が減ったことで運賃が高騰し、海運会社の利益が一時的に膨らみました。
このことは、コロナの影響を受けていない2020年3月期と直近(2023年3月期)の業績を比較すれば、明らかです。
決算期 | 売上高 | 純利益 | 配当金 |
---|---|---|---|
2020年3月 | 1兆1,554億円 | 326億円 | 21.7円 |
2023年3月 | 1兆6,119億円 | 7,960億円 | 560円 |
2023年3月期は、2020年に比べて、純利益(配当金の原資)が約24倍に増えています。
いかに、ここ数年のコロナ特需が異常だったかがわかります。
理由の2つ目は、株主還元に積極的な経営方針を取っていることです。
この点に関しては素直に評価すべきものと考えます。
2023年度~2025年度については、当社の企業価値及び財務体質が向上したことに伴い、連結配当性向を2022年度の25%から30%に引き上げ、業績に連動した配当を行います。加えて下限配当を導入し、海運市況サイクルの低位時に配当額が過少となることを防ぎます。
引用元:商船三井 IR情報、配当方針より
上記の配当方針のように、2024年3月期~2026年3月期(= 2023年度~2025年度)にかけては、配当性向を30%に引き上げることを表明しています。
このため、2024年3月期以降も高配当を維持できそうです。
決算期 | 売上高 | 純利益 | 配当金 |
---|---|---|---|
2024年3月 | 1兆6,279億円 | 2,616億円 | 220円 |
2025年3月(予想) | 1兆8,150億円 | 3,350億円 | 280円 |
商船三井:配当金&配当利回りの推移
商船三井の配当金・配当利回りの推移(過去10期分)は、下記のとおり。
※配当利回り= 配当金 ÷ 株価(期末)× 100 で算出
決算期 | 配当金 | 株価(期末) | 配当利回り | 配当性向 |
---|---|---|---|---|
2015年3月 | 23.3円 | 1,360円 | 1.71% | 19.8% |
2016年3月 | 16.7円 | 763.3円 | 2.19% | - |
2017年3月 | 6.7円 | 1,166.7円 | 0.57% | 45.5% |
2018年3月 | 6.7円 | 1,020円 | 0.66% | - |
2019年3月 | 15円 | 793.7円 | 1.89% | 20% |
2020年3月 | 21.7円 | 582.3円 | 3.73% | 23.8% |
2021年3月 | 50円 | 1,291.7円 | 3.87% | 19.9% |
2022年3月 | 400円 | 3,420円 | 11.70% | 20.3% |
2023年3月 | 560円 | 3,310円 | 16.92% | 25.4% |
2024年3月 | 220円 | 4,610円 | 4.77% | 30.4% |
ここ1、2年、高配当株として人気のある商船三井ですが、高配当で高利回りになったのは、2022年3月期からです。
高配当と高利回りを維持できるかは、今後の業績次第…。
商船三井の業績に要注目です!
なお、2025年の予想配当金は280円。現在の株価水準(4,800円台)で購入できれば、5.8%くらいの利回りは確保できそうです。
商船三井100株はいくらで買える?
商船三井の株価推移(直近1年)は、下記のとおり。
※株価チャートは拡大できます。
商船三井100株を購入する場合、下記で計算できます。
株価 × 100株 + 手数料 = 購入資金
2024年10月4日の商船三井の終値は、4,820円なので、これで計算してみます。
ちなみに、私も利用しているmoomoo証券の場合、日本株の手数料は「無料」となっています。
4,820円 × 100株 + 0円 = 482,000円
おおよそ48万円で購入可能です。
2022年4月に株式分割するまでは、100株購入するのに、100万円以上必要でした。
なので、金額的には手の届く銘柄になったと言えるでしょう。
それでは、「商船三井株は今、買い時なのか?」を以下で考察してみます。
【危険?】商船三井の株は、買い時なのか?
まずは、結論から。
結論:商船三井の株は、買わないほうがいい。
その理由は、下記のとおり。
- 理由①:海運株は景気敏感株で、投資が難しい
- 理由②:高配当狙いなら、他の銘柄を選ぶほうが良い
✓ 理由①:海運株は景気敏感株で、投資が難しい
論より証拠。
商船三井の過去6期分の業績を再掲します。
決算期 | 売上高 | 営業利益 | 純利益 |
---|---|---|---|
2019年3月 | 1兆2,340億円 | 377億円 | 268億円 |
2020年3月 | 1兆1,554億円 | 237億円 | 326億円 |
2021年3月 | 9,914億円 | -53億円 | 900億円 |
2022年3月 | 1兆2,693億円 | 550億円 | 7,088億円 |
2023年3月 | 1兆6,119億円 | 1,087億円 | 7,960億円 |
2024年3月 | 1兆6,279億円 | 1,031億円 | 2,616億円 |
売上高に関しては、おおむね1兆数千億円を稼いでいますが、営業利益に関しては増益と減益を繰り返しています。
また、2022年と23年の純利益は、コロナ禍の特需によって、コンテナ船の事業(ONE)からの利益が大幅に増えたもので、あくまでも例外的な数字です。
2024年3月期は、売上高が少し増加したものの、当期純利益は3分の1に激減しています。
✓ 理由②:高配当狙いなら、他の銘柄を選ぶほうが良い
ここ数年、高配当株の印象が強い商船三井ですが、実際の海運株は、
- 業績が大きく上下にブレる景気敏感株
- 海運業は成熟産業で投資妙味が少ない
というのが大方の見方です。
唯一、投資できるポイントが「高配当」という所ですが、高配当を狙うなら、もっと安心・安全に投資できる銘柄があります。
私がおすすめするのは、三菱HCキャピタル(8593)や三菱UFJフィナンシャル・グループ(8306)などの金融株です。
いずれも、 海運株に比べて業績が安定しており、かつ、4~5%の配当利回りを狙えます。
まとめ:今回のポイント
今回は、商船三井(9104)について解説しました。
ポイントをおさらいすると、下記のとおり。
- 株価急落の理由①:コンテナ船の運賃市況の悪化
- 株価急落の理由②:売却益狙いの利食い売りの増加
- 配当利回りが高い理由①:コロナ禍の特需で利益が激増
- 配当利回りが高い理由②:株主還元に積極的な経営方針
2023年7月19日の日本経済新聞によると、商船三井の個人株主数は31.6万人で、1年前から22.1万人も増加。増加数は上場企業の中でNo.1だったようです。
ですが、これはあくまでも過去の話。今から商船三井の株主になるのは、かなりリスキーだと考えています。
日本の上場企業は約3,900社あり、「高配当株」も多数存在します。
これからも個別株の分析記事をたくさん公開しますので、当ブログを引き続きよろしくお願いします!
※投資判断は、自己判断でお願いします。
今回は以上です。