信越化学の株価急落の理由は何ですか？
将来性や今後の株価・配当金の見通しについても教えてください。
こういった質問に答えます。
こんにちは、ブロガー＆投資家のフリーです。
今回は、「信越化学の株価急落の理由とは？」「信越化学、株価・配当金の今後の見通しは？」を中心に解説します。
ポイントは下記のとおり。
- 信越化学の株価急落の理由①：コロナによる売上高の減少
- 信越化学の株価急落の理由②：塩化ビニル樹脂の悪化懸念
- 信越化学の株価急落の理由③：「自社株買い」発表の遅れ
- 今後の株価は、「強含み」を予想
業績次第だが、株価は再び上場来高値（6,926円）を目指す…と考える - 信越化学の2025年3月期の予想配当金は、未定（2024年4月末現在）
ちなみに、最新の『会社四季報』では、100～110円を予想
※記事は2～3分で読み終わります。
信越化学はどんな会社？
信越化学工業（4063）は、塩化ビニル樹脂・シリコンウエハーで世界首位の化学メーカー。
上下水道や住宅に欠かせない「塩化ビニル樹脂」、半導体の材料基板である「シリコンウエハー」など、生活と産業の基礎となる素材・材料を作っています。
海外進出も1960年代と早く、今では売上高の約80％を海外（米国、アジア・オセアニア等）で稼いでいます。
また、利益水準が低い化学業界では異例の、営業利益率30％台、純利益率20％台の高収益企業です。
連結子会社の信越ポリマー（7970）も上場しており、半導体ウエハー容器や車載用キースイッチなどが収入源です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 社名 | 信越化学工業 |
| 証券コード | 4063 |
| 本社 | 東京都千代田区丸の内 |
| 設立 | 1926年9月 |
| 決算 | 3月31日 |
| 市場 | 東証プライム |
| 主な事業内容 | 塩化ビニル・シリコンウエハー等の材料事業 |
| 従業員数 | 約25,000名（2023年3月期） |
| 売上高 | 2兆4,149億円（2024年3月期） |
| 配当利回り | 1.52%（2024年3月期） |
| 株価 | 6,060円（2024年6月6日終値） |
| 購入できる証券会社 | 松井証券、moomoo証券 など |
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信越化学の業績推移
信越化学の過去6期分の業績は、下記のとおりです。
| 決算期 | 売上高 | 営業利益 | 純利益 |
|---|---|---|---|
| 2019年3月 | 1兆5,940億円 | 4,037億円 | 3,091億円 |
| 2020年3月 | 1兆5,435億円 | 4,060億円 | 3,140億円 |
| 2021年3月 | 1兆4,969億円 | 3,922億円 | 2,937億円 |
| 2022年3月 | 2兆744億円 | 6,763億円 | 5,001億円 |
| 2023年3月 | 2兆8,088億円 | 9,982億円 | 7,082億円 |
| 2024年3月 | 2兆4,149億円 | 7,010億円 | 5,201億円 |
直近の売上高は、減収と増収を繰り返しており、あまり安定していません。
コロナの影響を受けた、2020年と2021年3月期には 2期連続の減収となりました。
2022年と2023年3月期には増収に転じ、売上高は2兆円の大台を突破。
2024年3月期は、2兆円台をキープしましたが、再び減収になっています。
一方で、営業利益と純利益は安定しており、かつ高収益を維持しています。
※コロナ禍の2021年3月期は、若干の減益。
世界シェア1位の塩化ビニル樹脂やシリコンウエハー、世界シェア2位のフォトレジストなど、「生活」と「産業」に欠かせない製品が信越化学の強みです。
2024年3月期は、中国経済の不振などで減益となってしまいましたが、営業利益率 29％、純利益率 22％と高水準を維持しています。
信越化学の株価チャート（過去5年分）
信越化学の株価推移（過去5年分）は、下記のとおり。
※株価チャートは拡大できます。
信越化学の株価は、ここ5年間、ほぼ右肩上がりで推移しています。
2020年3月に1,700円台だった株価は、同年11月には3,500円を突破。ダブルバガー（2倍株）を達成しました。
2021年も株価は上昇基調で、9月には高値4,296円を記録。
ところが…、
その後、株価はやや軟調な展開に。2022年6月と9月には、3,000円を割り込む場面も見られました。
株価が再び勢いづいたのは、2023年に入ってから。
春先に4,000円台を回復。その後も上昇を続け、年末には6,000円近くまで跳ね上がります。
2024年も強気な相場は続き、3月には上場来高値 6,926円を記録しました。
現在は、高値警戒と利益確定の「売り」に押されて、株価はやや下落。6,000円前後で売買されています。
【やばい？】信越化学の株価急落の理由とは？
下記チャートのとおり、信越化学株はおおむね順調で、右肩上がりで推移しています。
ですが、少し細かくチャートを分析してみると、ここ5年の間でも、株価が急落する場面がいくつか見られます。
※株価チャートは拡大できます。
信越化学の株価急落の理由とは何か？
ここでは、その理由を考察してみたいと思います。
- 理由①：コロナによる売上高の減少
- 理由②：塩化ビニル樹脂の悪化懸念
- 理由③：「自社株買い」発表の遅れ
それぞれ解説します。
理由①：コロナによる売上高の減少
2020年3月の株価急落の理由としては、コロナによる売上高の減少が考えられます。
信越化学は、売上高の約80％を海外で稼ぐグローバル企業です。
※米国で30％、アジア・オセアニアで30％の売上を稼ぐ。日本の割合は20％。
塩化ビニル樹脂や、半導体シリコンウエハーで圧倒的なシェアを誇る信越化学も、コロナによる世界経済の悪化には勝てませんでした。
| 決算期 | 売上高 |
|---|---|
| 2019年3月 | 1兆5,940億円 |
| 2020年3月 | 1兆5,435億円 |
| 2021年3月 | 1兆4,969億円 |
上記のとおり、2020年と2021年3月期の2期に渡り、減収となりました。
当然ながら、投資家のマインドも低下。2020年2月に2,700円台だった株価は、その翌月には1,750円まで下落、約35％もの急落となりました。
理由②：塩化ビニル樹脂の悪化懸念
2022年6月の株価急落の理由としては、塩化ビニル樹脂の悪化懸念が考えられます。
塩化ビニル樹脂を含む「生活環境基盤材料」事業は、信越化学の一番の稼ぎ頭で、売上高の40％を占めています。
その塩ビ樹脂の最大の需要先である、米国の住宅着工件数が大幅に減少。1年1ヵ月ぶりの低水準になりました。
参考：（2022年）5月の米住宅着工、14.4％減 1年1ヵ月ぶり低水準（日本経済新聞）
歴史的な高水準を維持してきた塩ビ市況も調整局面が予想され、信越化学の株価も値下がりしました。
※3,600円台だった株価は、一時2,800円台まで約20%下落しました。
理由③：「自社株買い」発表の遅れ
2024年4～5月の株価急落の理由としては、「自社株買い」発表の遅れが考えられます。
信越化学は毎年、株主還元策の一環として、通期決算の発表（4月下旬）と同時に、「自社株買い」の発表を行ってきました。
ところが、2024年は「自社株買い」の発表がなく、「株主還元に消極的になった」との評価を受け、株価が下落してしまいました。
※3月の上場来高値6,926円から、5,800円台まで1,000円以上（＝約15％）下落しました。
✓ 追記：信越化学、「自社株買い」を発表
2024年5月17日、信越化学は最大1,000億円の「自社株買い」を実施する…と発表。
この発表を好感し、株価はひとまず落ち着きを取り戻しました。
少し様子を見なければなりませんが、株価は一応、底を打ったようです…。
信越化学100株はいくらで買える？
信越化学を100株購入する場合、計算式は下記になります。
株価 × 100株 ＋ 手数料 ＝ 購入資金
2024年6月6日の信越化学の終値は、6,060円なので、これで計算してみます。
ちなみに、moomoo証券の場合、日本株の手数料は「無料」となっています。
6,060円 × 100株 ＋ 0円＝ 606,000円
60万円くらいで、信越化学の株主になれます。
信越化学、株価の今後の見通しは？
✓ 信越化学、過去5年分の株価（高値・安値）
信越化学の過去5年分の株価（高値・安値）を一覧表にしてみました。
※2023年4月の株式分割（1株 → 5株）を考慮して作成。
※2024年は6月6日までの数字。
| 年 | 高値 | 安値 |
|---|---|---|
| 2020年 | 3,677円（12月） | 1,750.2円（3月） |
| 2021年 | 4,296円（9月） | 3,393円（3月） |
| 2022年 | 4,134円（1月） | 2,837円（9月） |
| 2023年 | 5,935円（12月） | 3,158円（1月） |
| 2024年 | 6,926円（3月） | 5,378円（1月） |
ちなみに、 信越化学の上場来高値は6,926円（2024年3月）。
現在の株価は 6,060円（2024年6月6日終値）となっています。
✓ 信越化学、株価の今後の見通しは？
株価は、下記の計算式で求められます。
EPS（1株利益）× PER（株価収益率）＝ 株価
2025年3月期の信越化学の予想EPSは、320.7円（※）。
※2025年3月期の予想EPSは未発表のため、最新の『会社四季報』の数字を参考にしています。
信越化学の過去5期分のPERは、最低が12.3倍、最高が26.3倍（信越化学工業 有価証券報告書より）。
以上の2つの数字から、信越化学の株価を計算すると下記になります。
320.7円 × 12.3倍～26.3倍＝ 3,945円～8,434円
あくまでも、計算上ですが、「3,945円～8,434円」という株価が算出されました。
先述のとおり、 信越化学の上場来高値は6,926円（2024年3月）。現在の株価は 6,060円（2024年6月6日終値）です。
今後の業績次第ではありますが、「株価は再び、上場来高値（6,926円）を目指す展開になる…」と考えています。
2025年3月期第1四半期の決算を待ちたいと思います。
※2024年7月末、発表予定。
信越化学、配当金の今後の見通しは？
✓ 信越化学の配当実績（過去5期分）
信越化学の配当実績（過去5期分）は、下記のとおり。
※2023年4月の株式分割（1株 → 5株）を考慮して作成。
※配当利回り＝ 各期の配当金 ÷ 株価（期末）× 100 で算出。
| 決算期 | 配当金 | 株価（期末） | 配当利回り |
|---|---|---|---|
| 2020年3月 | 44円 | 2,146円 | 2.05％ |
| 2021年3月 | 50円 | 3,722円 | 1.34％ |
| 2022年3月 | 80円 | 3,758円 | 2.13％ |
| 2023年3月 | 100円 | 4,275円 | 2.34％ |
| 2024年3月 | 100円 | 6,584円 | 1.52％ |
信越化学の過去5期分の配当利回りは、1.34～2.34％。平均すると1.88％で、2％を下回っています。
東証プライム全銘柄の配当利回りは、2.23％（2024年6月6日、日本経済新聞より）なので、平均よりも低いことがわかります。
✓ 信越化学、配当金の今後の見通しは？
2025年3月期は「通期」の業績予想が発表されておらず（→ 業績予想は、第1四半期まで）、
信越化学の2025年3月期の予想配当金も「未定」となっています。
※信越化学が2024年4月末に公表した、決算短信に基づく情報。
配当金の今後の見通しについては、情報が更新され次第、追記します。
なお、最新の『会社四季報』では、2025年3月期の予想配当金を、100～110円と予想しています。参考にしてください。
最後に、信越化学の配当方針を載せておきます。
引用元：信越化学工業 株主還元
- 35％前後の配当性向を目安に安定的な配当に努めてきた
- 過去10年の配当性向は通算すると31％
- 今後は、中長期的に40％の配当性向を目指していく
信越化学株に関してよくある質問
信越化学株に関して、よくある質問をまとめてみました。
- 質問①：信越化学株の将来性について教えてください
- 質問②：信越化学の2024年3月期の配当金はいくらでしたか？
- 質問③：信越化学に株主優待はありますか？
- 質問④：信越化学はいつ株式分割をしましたか？
以下で回答します。
質問①：信越化学株の将来性について教えてください
信越化学は、下記のような「強み」をもっているため、将来的にも安心して投資できる企業であると考えます。
信越化学の強み
- 半導体シリコンウエハー、塩化ビニル樹脂で世界No.1
- 米国、アジア、日本でバランス良く稼ぐ、グローバル企業
- 営業利益率30％台、純利益率20％台の高収益企業
- 抜群の財務体質（総資産の約70％が利益剰余金、自己資本比率80％超）
業績が安定せず、赤字決算を出すこともある総合化学メーカー（住友化学など）とは全く異なる、唯一無二の存在です。
ただし、投資の際には「株価」に要注意です！
いくら優良企業でも、「株を高値掴み」すると、投資は失敗します。
質問②：信越化学の2024年3月期の配当金はいくらでしたか？
信越化学の2024年3月期の配当金は、下記のとおりです。
| 時期 | 配当金 |
|---|---|
| 中間配当（2023年9月） | 50円 |
| 期末配当（2024年3月） | 50円 |
| 合 計 | 100円 |
上記のとおり、信越化学の配当金は2回に分けて分配されます。
100株を保有している場合、10,000円の配当金を受け取ることができました。
※実際の手取り額は7,969円（20.315％の所得税・住民税が引かれる）です。
なお、信越化学の今期（2025年3月期）の配当金は、現時点（2024年4月末）では未定です。
また、受け取れる配当金は、業績によって変化します。moomoo（ムームー）などの株アプリで、会社の業績をこまめに確認しましょう！
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＞＞【moomoo】アプリの使い方とメリット、使ってみた感想を解説！
質問③：信越化学に株主優待はありますか？
残念ながら、信越化学に株主優待はありません。
会社のIRページも確認しましたが、今のところ株主優待を始める予定は無さそうです。
Q：株主優待制度はありますか
A：株主優待制度はございません。
引用元：信越化学 FAQ（IR情報）
質問④：信越化学はいつ株式分割をしましたか？
信越化学は、2023年4月に株式分割（1株 → 5株）を実施しています。
「新NISA開始を契機として、個人投資家の拡大を図る」ことが、株式分割の目的のようです。
実際、株式分割「前」の信越化学の株価は、1株あたり20,000～21,000円で、100株購入するには約200万円の資金が必要でした。
分割「後」、信越化学の株価は、1株あたり4,000～6,000円台で推移しており、40～60万円くらいで購入できる銘柄になりました。
まとめ：今回のポイント
今回は、信越化学（4063）について解説しました。
ポイントをおさらいすると、下記のとおり。
- 信越化学の株価急落の理由①：コロナによる売上高の減少
- 信越化学の株価急落の理由②：塩化ビニル樹脂の悪化懸念
- 信越化学の株価急落の理由③：「自社株買い」発表の遅れ
- 今後の株価は、「強含み」を予想
業績次第だが、株価は再び上場来高値（6,926円）を目指す…と考える - 信越化学の2025年3月期の予想配当金は、未定（2024年4月末現在）
ちなみに、最新の『会社四季報』では、100～110円を予想
信越化学は世界でトップシェアを誇る製品を多数抱え、高収益かつ財務も安定している優良企業です。
ですが、株を高値掴みしたり、業績が一時的に悪化した場合には、株価の急落で損をしてしまう可能性もあります。
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※投資判断は、自己責任でお願いします。
今回は以上です。