
パナソニックの株価はなぜ安いのですか?
今後の株価や配当金の見通しはどうですか?
こういった質問に答えます。
こんにちは、ブロガー&投資家のフリーです。
今回は、「パナソニックの株価はなぜ安いのか?」「パナソニック、今後の株価・配当の見通し」を中心に解説します。
ポイントは下記のとおり。
- パナソニックの株価が安い理由①:企業業績の長期低迷
- パナソニックの株価が安い理由②:不採算事業の整理に追われた
- パナソニックの株価が安い理由③:本当に再成長できるのか不透明
- パナソニックの今後の株価は、「1,543円~2,140円」を予想
ただし、特殊要因で増えたEPSが根拠なので「買い」は推奨しない - パナソニックの今後の配当金は、中間配当の予想が17.5円
期末配当の予想は、現時点では未定(2023年10月現在)
※記事は3分くらいで読み終わります。
パナソニックはどんな会社?

パナソニック ホールディングス(6752)は、日本を代表する総合家電メーカー。
白物家電だけではなく、AV機器、EV向け電池、車載機器、空調、ソフトウェア、住宅設備など、幅広く事業を展開しています。
海外の売上比率が6割を超えるグローバル・カンパニーでもあります。
1935年(昭和10年)12月に設立された、松下電器産業(故・松下幸之助氏が一代で築き上げた会社)がパナソニックの母体です。
ただ、残念ながら、株価は長期に渡って低迷しています。現在の株価は、2000年3月に付けた上場来高値(3,320円)の半値以下の水準に沈んでいます。
日立製作所(6501)やソニーグループ(6758)のような復活劇を、ぜひ見せてほしい銘柄の1つです…。
項目 | 内容 |
---|---|
社名 | パナソニック ホールディングス |
証券コード | 6752 |
本社 | 大阪府門真市 |
設立 | 1935年12月 |
決算 | 3月31日 |
市場 | 東証プライム |
主な事業内容 | 家電、EV向け電池、空調、ソフトウェアなど |
従業員数(連結) | 約233,000名(2023年3月期) |
売上高 | 8兆3,789億円(2023年3月期) |
配当利回り | 2.54%(2023年3月期) |
株価 | 1,474.5円(2023年10月23日終値) |
購入できる証券会社 | 松井証券、楽天証券など |
パナソニック株は、ネット証券で購入するのが便利で、手数料もお得です。
松井証券の場合、1日の取引額が50万円以下の場合、手数料が無料ですので、ぜひこの機会に口座を開設しておきましょう。
パナソニックの業績推移

パナソニックの過去5期分の業績は、下記のとおりです。
決算期 | 売上高 | 営業利益 | 純利益 |
---|---|---|---|
2019年3月 | 8兆27億円 | 4,114億円 | 2,841億円 |
2020年3月 | 7兆4,906億円 | 2,937億円 | 2,257億円 |
2021年3月 | 6兆6,987億円 | 2,586億円 | 1,650億円 |
2022年3月 | 7兆3,887億円 | 3,575億円 | 2,553億円 |
2023年3月 | 8兆3,789億円 | 2,885億円 | 2,655億円 |
売上高は、2019年~2021年3月期にかけて減少していましたが、2022年3月期からは、増収に転じていています。
EV向け電池、車載機器、欧州向け空調(ヒートポンプ式暖房機)の販売が好調なこと、2021年9月に買収した米国のブルーヨンダー(物流効率化システムを手掛ける企業)の売上が上乗せされたことがおもな要因です。
一方で、営業利益・純利益は増益と減益を繰り返していて、安定しません。
営業利益は2,500億円~3,500億円、純利益は2,000億~2,800億円を稼いでいる状況です。
売上規模で1位と2位の家電&車載機器事業の利益率が低いことや、2022年4月の持ち株会社化に伴う人事・経理などの間接部門のコストが大きな重荷になっているようです。
パナソニックの株価推移

パナソニックの過去5年分の株価推移は、下記のとおり。
※株価チャートは拡大できます。

パナソニックの株価は、2019年8月に787.7円、2020年3月に691.7円の安値を付けました。
2020年後半からは、株価は一転、上昇傾向に転じます。
2021年10月には1,541円の高値を記録しました。
※低迷した2021年3月期から、業績が増収増益に転じたため(2022年3月期)。
ですが、その後、株価は冴えない展開に…。
2023年の春先まで、1,000円~1,300円の間を株価が行き来するボックス相場となりました。
再び転機が訪れたのは、2023年5月以降です。
※2024年3月期の業績見通しが、増収増益と好調な予想だったため。
株価は上昇し、一時1,808円の高値(2023年9月)を付けました。
現在の株価は1,500円前後と、少し値下りして推移しています。
パナソニックの株価はなぜ安い?

パナソニックの株価が安い理由は、下記の3点が考えられます。
理由①:企業業績の長期低迷
理由②:不採算事業の整理に追われた
理由③:本当に再成長できるのか不透明
それぞれ解説します。
理由①:企業業績の長期低迷
理由の1つ目は、企業業績の長期低迷です。
下記は、パナソニックの長期(過去11期分)の売上高の推移です。

パナソニックの売上高は、上記のようにほぼ横ばいで、ほとんど成長が見られません。
また、本業の儲けを示す営業利益も、約40年にわたり最高益を更新できていません。
ちなみに、パナソニックの営業最高益は1984年11月期の5,756億円。
直近(2023年3月期)の営業利益は2,885億円にとどまります。
売上高や営業利益の長期低迷を受けて、パナソニックの株価は安値に放置されています。
理由②:不採算事業の整理に追われた
理由の2つ目は、不採算事業の整理に追われたからです。
パナソニックのここ10年の歴史は、赤字事業・不採算事業からの撤退や整理に費やされたといっても過言ではありません。
- プラズマテレビ事業の失敗
- 太陽光パネルの生産撤退
- 三洋電機の買収失敗
- 半導体事業の売却
2012年と2013年3月期に巨額の最終赤字を計上したプラズマテレビ事業の失敗や、三洋電機の買収失敗など、「負の遺産」の整理に経営資源を奪われてきました。
このような経営を繰り返した結果、同社は株式市場からの信用も失ってしまい、株価も低迷しています。
理由③:本当に再成長できるのか不透明
理由の3つ目は、本当に再成長できるのか不透明だからです。
パナソニックは2023年5月、中長期的な再成長に向けての経営戦略を発表。
同社は、下記の3つの事業を今後の成長分野と位置付け、投資を行っていく方針を固めました。
- EV向けの電池事業
- 企業向けのソフトウェア事業
- 欧州向けの空調事業
参考:パナソニックグループ戦略説明会
EV向けの電池事業は、米国のネバダ州の工場で、米テスラに供給するリチウムイオン電池を生産。
さらに、2025年3月期にはカンザス州で建設中の工場も稼働する見通しです。
企業向けのソフトウェア事業は、2021年9月に買収した米ブルーヨンダーをフル活用します。
米国で3,000社超の顧客基盤を持つブルーヨンダーの強みを活かし、物流の効率化システムを販売。パナソニックとの相乗効果も狙います。
欧州向けの空調事業は、環境意識の高い欧州でヒートポンプ式暖房機を販売。
AV機器を生産してきたチェコの工場を転換し、新棟も増設。100万台の生産を目標としています。
ただし、上記の3事業で、売上規模8兆円のパナソニックが再成長できるかは不透明…。
今後、3~4年くらいのスパンで注視していく必要があると考えます。
パナソニックの配当利回りは何%?

パナソニックの過去5期分の配当利回りは、1.40%~3.64%。平均すると、2.65%です。
東証プライム全銘柄の配当利回りは、2.32%(2023年10月23日、日本経済新聞より)なので、平均よりもほんの少し高めです。
※配当利回り= 各期の配当金 ÷ 株価(期末)× 100で算出
決算期 | 配当金 | 株価(期末) | 配当利回り | 配当性向 |
---|---|---|---|---|
2019年3月 | 30円 | 954.2円 | 3.14% | 24.6% |
2020年3月 | 30円 | 825円 | 3.64% | 31.0% |
2021年3月 | 20円 | 1,423.5円 | 1.40% | 28.3% |
2022年3月 | 30円 | 1,188.5円 | 2.52% | 27.4% |
2023年3月 | 30円 | 1,182円 | 2.54% | 26.4% |
株価が1,000円を割っていた、2019年と2020年3月期は、配当利回り3%台を確保。
株価が少し上昇した、直近の2期は2.5%台で、ほぼ平均的な配当利回りとなっています。
ここ5年間は、ほぼ30円の年間配当を続けていますが、連続増配を続ける企業も存在する中、パナソニックには物足りなさを感じます。
※連続増配株に興味のある方は、こちらの記事もご覧ください。
パナソニック100株で配当金はいくらもらえる?

パナソニックの2023年3月期の配当金は、下記のとおり。
時期 | 配当金 |
---|---|
中間配当(2022年9月) | 15円 |
期末配当(2023年3月) | 15円 |
合 計 | 30円 |
上記のとおり、パナソニックの配当金は、2回に分けて支払われます。
100株を保有している場合、3,000円の配当金を受け取ることができました。
※なお、実際の手取り額は2,391円(20.315%の所得税・住民税が引かれる)です。
毎年受け取れる配当金は、業績によって異なりますので、3カ月ごとの決算短信などで常に会社の動向をウォッチしていきましょう。
>> 決算短信の読み方をサクッと解説!【ポイントは5つだけ】
パナソニック100株はいくらで買える?

ここ1年のパナソニックの株価推移は、下記のとおり。
※株価チャートは拡大できます。

パナソニック100株を購入する場合、下記で計算できます。
株価 × 100株 + 手数料 = 購入資金
2023年10月23日のパナソニックの終値は、1,474.5円なので、これで計算してみます。
ちなみに、私も利用している松井証券の場合、50万円までの取引なら、手数料は無料となっています。
1,474.5円 × 100株 + 0円 = 147,450円
おおよそ15万円くらいで購入可能です。
パナソニック、今後の株価・配当の見通し

最後に、パナソニックの株価と配当の見通しについて、以下で考察してみます。
パナソニック、今後の株価の見通し
株価は、下記の計算式で求められます。
EPS(1株利益)× PER(株価収益率)= 株価
2024年3月期のパナソニックの予想EPSは、197.08円(パナソニック ホールディングス 決算短信より)。
パナソニックの過去5期分のPERは、最低が7.83倍、最高が10.86倍(パナソニック ホールディングス 有価証券報告書より)。
※業績が悪化した2021年3月期のPERは高くなったので、除外しています。
以上の2つの数字から、パナソニックの株価を計算すると下記になります。
197.08円 × 7.83倍~10.86倍= 1,543円~2,140円
あくまでも、計算上ですが、「1,543円~2,140円」という株価が算出されました。
ちなみに、現在のパナソニックの株価は 1,474.5円(2023年10月23日終値)。
もし、2,140円まで株価が上昇するなら、今からパナソニックの株を買えば儲かりそうですが、注意が必要です。
なぜなら…
2024年3月期の予想EPS(1株利益)は、EV向け電池の補助金の上乗せなど、特殊要因で増加するもので、「パナソニックの本業の稼ぐ力を正確に反映したものではない」からです。
株価はEPSの持続的な伸びを評価し、上昇します。
パナソニックのEPSが今後も成長していくかは未知数なので、今の株価で安易に購入するのは少し危険だと個人的には考えています。
パナソニック、今後の配当の見通し
パナソニックの過去10期分の配当金の推移は、下記のとおり。
決算期 | 配当金 |
---|---|
2014年3月 | 13円 |
2015年3月 | 18円 |
2016年3月 | 25円 |
2017年3月 | 25円 |
2018年3月 | 30円 |
2019年3月 | 30円 |
2020年3月 | 30円 |
2021年3月 | 20円 |
2022年3月 | 30円 |
2023年3月 | 30円 |
パナソニックの配当金は、2014年3月期から2018年3月期にかけて、増配を続けてきました。
ですが、2019年3月期以降は30円の配当になり、増配もストップします。
※2021年3月期の配当金は20円になっていますが、業績不振により純利益(配当金の原資)が減少したためです。
なお、2024年3月期の予想配当金は未定(2023年7月末現在)でしたが、2023年8月末に中間配当(17.5円)のみ発表になりました。
期末の配当予想は、現時点では未定となっています。
参考までに、パナソニックの配当方針も載せておきます。
引用元:パナソニック ホールディングス、有価証券報告書より抜粋
- 業績に応じた利益配分を基本とする
- 配当性向30%を目安に、安定的かつ継続的な配当に努める
上記のとおり、パナソニックの配当方針は平凡な内容であり、株価が1,000円を下回るなど、配当利回りが3%台になる場合を除き、配当狙いの投資は妙味が少ないと考えます。
まとめ:今回のポイント

今回は、パナソニック(6752)について解説しました。
ポイントをおさらいすると、下記のとおり。
- パナソニックの株価が安い理由①:企業業績の長期低迷
- パナソニックの株価が安い理由②:不採算事業の整理に追われた
- パナソニックの株価が安い理由③:本当に再成長できるのか不透明
- パナソニックの今後の株価は、「1,543円~2,140円」を予想
ただし、特殊要因で増えたEPSが根拠なので「買い」は推奨しない - パナソニックの今後の配当金は、中間配当の予想が17.5円
期末配当の予想は、現時点では未定(2023年10月現在)
パナソニックは、楠見社長が2021年4月にして就任してから、2年半が経ちました。
楠見社長は、EV向けの電池事業、企業向けのソフトウェア事業、欧州向けの空調事業の3つを成長分野として、名門復活を目指すと宣言しています。
また、事業ポートフォリオの見直し(30以上ある事業の整理・統合や売却)を実施することも、決算書類などで言及しています。
あくまでも、個人的な見解ですが、パナソニックへの投資は現在、難しい局面にあると判断しています。
EV向け電池事業など、成長分野の行方が不透明なこと、事業ポートフォリオの見直しによって、今後も利益が大きく下振れする可能性があることが、その理由です。
幸い、パナソニック以外にも、日本株には投資対象がたくさんあります。
興味のある方は、下記の記事もぜひご覧ください。
※投資判断は自己責任でお願いします。
今回は以上です。