日本郵船の株価は、なぜあんなに上がるのですか?
また、ここ2~3年で株価が2回大きく下がりましたが、なぜですか?
こういった質問に答えます。
こんにちは、ブロガー&投資家のフリーです。
今回は、「日本郵船の株価はなぜ上がる?」「日本郵船の株価はなぜ下がる?」「日本郵船の配当金はいくらもらえる?」などを中心に解説します。
ポイントは下記のとおり。
- 株価上昇の理由①:コロナ禍での業績の急拡大
- 株価上昇の理由②:コロナ明け後も、好調な業績と高配当を維持
- 株価下落の理由①:コンテナ船の運賃市況の悪化
- 株価下落の理由②:2022年末に景気後退が懸念された
- 日本郵船の2025年3月期の予想配当金は 260円。前期に比べて、120円の増配予定
※記事は2~3分で読み終わります。
日本郵船はどんな会社?
日本郵船(9101)は、海運業で国内No.1。三菱グループの発祥企業でもあります。
不定期専用船(ばら積み船、自動車船等)が売上の約50%を占めていて、最近の決算ではコンテナ船(ONE:オーシャン・ネットワーク・エクスプレス)が稼ぎ頭になっています。
さらに、郵船ロジスティクスを傘下に所有し、「海運・物流」の両分野でバランス良く稼いでいる企業です。
項目 | 内容 |
---|---|
社名 | 日本郵船 |
証券コード | 9101 |
本社 | 東京都千代田区丸の内 |
設立 | 1885年9月 |
決算 | 3月31日 |
市場 | 東証プライム |
主な事業内容 | 不定期専用船、コンテナ船、物流 |
従業員数(連結) | 約35,000名(2024年3月期) |
売上高 | 2兆3,872億円(2024年3月期) |
配当利回り | 3.44%(2024年3月期) |
株価 | 4,898円(2024年10月8日終値) |
購入できる証券会社 | 松井証券、moomoo証券 など |
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日本郵船の業績推移
日本郵船の業績推移(過去8期分)と、2025年3月期の業績予想は下記のとおり。
決算期 | 売上高 | 営業利益 | 純利益 |
---|---|---|---|
2017年3月 | 1兆9,238億円 | -180億円 | -2,657億円 |
2018年3月 | 2兆1,832億円 | 278億円 | 201億円 |
2019年3月 | 1兆8,293億円 | 110億円 | -445億円 |
2020年3月 | 1兆6,683億円 | 386億円 | 311億円 |
2021年3月 | 1兆6,084億円 | 715億円 | 1,392億円 |
2022年3月 | 2兆2,807億円 | 2,689億円 | 1兆91億円 |
2023年3月 | 2兆6,160億円 | 2,963億円 | 1兆125億円 |
2024年3月 | 2兆3,872億円 | 1,746億円 | 2,286億円 |
2025年3月(予想) | 2兆5,700億円 | 2,150億円 | 3,900億円 |
売上高は、ある程度の増減はあるものの、1兆7,000億円~2兆3,000億円くらいで推移しています。
ですが、営業利益と純利益はブレ幅が大きく、増益と減益を繰り返しており、赤字を出している決算期もあります。
2017年3月期の2,657億円の最終赤字は、市況低迷の長期化により、保有する船などの減損損失を計上したためです。
一方で、2022年と2023年3月期の利益額が異常に大きいのは、コロナ禍での需給ひっ迫でコンテナ船の利益が急増したからです。
コロナ特需の反動もあって、2024年3月期の純利益は4分の1以下に激減しています。
なお、2025年3月期は、営業利益が2,000億円台を回復、純利益も4,000億円近くを稼ぐ見込みです。
※2025年3月期は、自動車船やばら積み船の需要が好調なため、増収増益の見通しです。
海運株はこのように業績のブレ幅が大きく、投資の際には十分な注意が必要です。
日本郵船の株価はなぜ上がる?
日本郵船の株価チャート(直近5年分)をご覧ください。
※株価チャートは拡大できます。
2018年~2020年まで、株価は 400円~800円のボックス圏内で推移。
2021年の春先から、株価は次第に上昇基調に…。2022年3月には、高値4,163.3円を記録しました。
その後、1年数ヵ月の調整期間を経て、2023年12月には 4,670円、2024年10月には 5,543円と高値を更新し続けています。
日本郵船の株価はなぜ上がるのか?
株価が上昇した理由は、下記の2点が考えられます。
- 理由①:コロナ禍での業績の急拡大
- 理由②:コロナ明け後も、好調な業績と高配当を維持
以下で解説します。
理由①:コロナ禍での業績の急拡大
理由の1つ目は、コロナ禍での業績の急拡大です。
コロナ特需が発生する前(2020年&2021年3月期)と、特需があった期間(2022年&2023年3月期)の業績を載せておきます。
決算期 | 売上高 | 営業利益 | 純利益 |
---|---|---|---|
2020年3月 | 1兆6,683億円 | 386億円 | 311億円 |
2021年3月 | 1兆6,084億円 | 715億円 | 1,392億円 |
2022年3月 | 2兆2,807億円 | 2,689億円 | 1兆91億円 |
2023年3月 | 2兆6,160億円 | 2,963億円 | 1兆125億円 |
日本国内で新型コロナの緊急事態宣言が出たのが、2020年4月。
当初は経済も一時的にストップしましたが、その後徐々に回復。経済の再開とともに物流も動きだし、港湾関係者の人手不足などを背景に需給がひっ迫。
とくにコンテナ船の船料が大幅に増加し、日本郵船の業績も2022年3月期(2021年4月~2022年3月)から急拡大へ…。
参考:日本郵船 海運市況
株価も業績拡大を見越して、2021年の3月頃から上昇を始めました。
理由②:コロナ明け後も、好調な業績と高配当を維持
理由の2つ目は、コロナ明け後も、好調な業績と高配当を維持していることです。
コロナ特需が落ち着いた、2024年3月期の業績と2025年3月期の業績見通しは、下記のとおり。
決算期 | 売上高 | 営業利益 | 純利益 |
---|---|---|---|
2024年3月 | 2兆3,872億円 | 1,746億円 | 2,286億円 |
2025年3月(予想) | 2兆5,700億円 | 2,150億円 | 3,900億円 |
2022年や2023年3月期ほどではありませんが、2024年3月期は売上高2兆円台、純利益も2,000億円台を計上しています。
また、2025年3月期(今期)の業績見通しも、売上高2兆5,700億円、純利益3,900億円と増収増益の見込み…。
このような好調な業績を背景に、株価は上昇を続けています。
さらに、配当面でも明るい材料が出ています。
決算期 | 配当金 | 配当利回り |
---|---|---|
2022年3月 | 483.3円 | 13.47% |
2023年3月 | 520円 | 16.83% |
2024年3月 | 140円 | 3.44% |
2025年3月(予想) | 260円 | - |
コロナ特需が終了した、2024年3月期の配当金は140円と、前期(520円)から大幅に減配しました。
ところが、2025年3月期(今期)の予想配当金は260円と、ほぼ倍増。配当利回りも、前期の3%台から5%台(※)へと上昇しています。
※日本郵船の株価 4,898円(2024年10月8日終値)で計算。260円 ÷ 4,898円 × 100 = 5.31%
2022年や2023年ほどではありませんが、配当狙いの投資家が、再び同社の株を購入していると考えられます。
日本郵船の株価はなぜ下がる?
まずは、先ほどの株価チャートを再掲します。
※株価チャートは拡大できます。
2021年に入ってから、ボックス圏を抜け出し上昇傾向にあった日本郵船株ですが、2021年9月と2022年9月には20%以上も株価が暴落しました。
ここからは、日本郵船の株価はなぜ下落したのかを考察していきます。
株価が下落した理由は、下記の2点が考えられます。
- 理由①:コンテナ船の運賃市況の悪化
- 理由②:2022年末に景気後退が懸念された
それぞれ解説します。
理由①:コンテナ船の運賃市況の悪化
理由の1つ目が、コンテナ船の運賃市況の悪化です。
下記は、中国コンテナ船運賃指数です。
※拡大してご覧ください。
2020年後半から上昇したコンテナ船の運賃は、2021年を頂点として、それ以降はピークアウト。
中国コンテナ船運賃指数やバルチック海運指数の下落は、日本郵船などの海運株の下落をもたらします。
その理由は、これらの指標が景気より先行して動くからです。
したがって、コンテナ船運賃指数などが下落すれば、その後の業績にも悪影響を及ぼします。
2021年9月と2022年9月の株価暴落は、コンテナ船の運賃市況の悪化を嫌気した投資家の売りが原因と考えます。
参考:日本郵船が1カ月半ぶり1万円割れ、今後の業績悪化を警戒(会社四季報オンライン)
理由②:2022年末に景気後退が懸念された
理由の2つ目は、2022年末に景気後退が懸念されたからです。
当時、日本郵船の社長だった長沢氏も、インタビューで下記のように答えています。
「2022年末に向けてリセッション(景気後退)が避けられない。コンテナ船の狂乱も今年いっぱいで平時に戻る」
引用元:日本郵船社長「年末向けリセッション」海運市況に転機(日本経済新聞)
実際、2022年11月に日本郵船が発表した、2023年3月期の純利益の見通しは1兆300億円。
減益見通しだった従来予想(純利益:9600億円)からは少しだけ上方修正されたものの、投資家から想定内と判断され、株が売られました。
ただし、この株価下落は一時的なものとなりました。
下記のとおり、2023年3月期の業績が増収増益で着地したからです。
決算期 | 売上高 | 営業利益 | 純利益 |
---|---|---|---|
2022年3月 | 2兆2,807億円 | 2,689億円 | 1兆91億円 |
2023年3月 | 2兆6,160億円 | 2,963億円 | 1兆125億円 |
日本郵船の株価は、今後も業績と配当の動向しだいで上下に大きく変動しそうです。
日本郵船の配当利回りは何%?
日本郵船の配当金&配当利回り(過去8期分)は、下記のとおり。
※2022年10月に実施された、株式分割(1株 → 3株)を考慮して作成
※配当利回り= 各期の配当金 ÷ 株価(期末)× 100で算出
決算期 | 配当金 | 株価(期末) | 配当利回り | 配当性向 |
---|---|---|---|---|
2017年3月 | 0円 | 783.3円 | 0% | - |
2018年3月 | 10円 | 716円 | 1.40% | 25.1% |
2019年3月 | 6.7円 | 540.7円 | 1.24% | - |
2020年3月 | 13.3円 | 428.7円 | 3.10% | 21.7% |
2021年3月 | 66.7円 | 1,258.3円 | 5.30% | 24.3% |
2022年3月 | 483.3円 | 3,586.7円 | 13.47% | 24.3% |
2023年3月 | 520円 | 3,089円 | 16.83% | 26.1% |
2024年3月 | 140円 | 4,073円 | 3.44% | 29.9% |
日本郵船の配当利回りは、0%~16.83%と大きなブレがあり、確実な収入源にはなりにくい銘柄です。
安定的に「4~5%の配当利回り」を狙える株ではないこともわかります。
10%を超える高利回りは、2022年&2023年3月期で終了しているので、これから投資を予定している人は注意が必要です。
ちなみに、東証プライム全銘柄の利回りは、2.30%(2024年10月8日、日本経済新聞より)。
日本郵船に投資をする際の参考にしてください。
日本郵船100株で配当金はいくらもらえる?
日本郵船の2024年3月期の配当金は、下記のとおりでした。
※2022年の株式分割(1株 → 3株)を考慮して作成
時期 | 配当金 |
---|---|
中間配当(2023年9月) | 60円 |
期末配当(2024年3月) | 80円 |
合 計 | 140円 |
上記のとおり、日本郵船の配当金は、2回に分けて分配されます。
100株を保有している場合、14,000円の配当金を受け取ることができました。
※なお、実際の手取り額は11,156円(20.315%の所得税・住民税が引かれる)です。
配当金の額は、業績によって大きく変化します。moomoo(ムームー)などの株アプリで、企業の動向をチェックしましょう。
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✓ 日本郵船の予想配当金(2025年3月期)
日本郵船の2025年3月期の予想配当金は、下記のとおり。
時期 | 配当金 |
---|---|
中間配当(2024年9月) | 130円 |
期末配当(2025年3月) | 130円 |
合 計 | 260円 |
今期(2025年3月期)の予想配当金は260円と、前期(2024年3月期)の140円と比べて大幅な増配となりました。
増配の要因は、配当金の原資となる純利益が3,900億円へと、前期の2,200億円台から1.5倍以上になる見込みだからです。
2024年10月8日の終値が4,898円なので、今期の予想配当利回りは5.31%(260円 ÷ 4,898円 × 100)です。
参考までに、日本郵船の配当方針も載せておきます。
引用元:日本郵船 中期経営計画2026
- 配当性向目安を従来の25%から30%へ引き上げ
- 1株当たり配当下限額を100円に引き上げ
日本郵船100株はいくらで買える?
日本郵船の直近1年の株価推移は、下記のとおり。
※株価チャートは拡大できます。
日本郵船100株を購入する場合、下記で計算できます。
株価 × 100株 + 手数料 = 購入資金
2024年10月8日の日本郵船の終値は、4,898円なので、これで計算してみます。
ちなみに、私も利用しているmoomoo証券の場合、日本株の手数料は「無料」となっています。
4,898円 × 100株 + 0円 = 489,800円
49万円あれば、100株購入できます。
2022年10月に株式分割するまでは、100株購入するのに、100万円以上必要でした。
なので、半分くらいの資金で購入できる銘柄になりました。
まとめ:今回のポイント
今回は、日本郵船(9101)について解説しました。
ポイントをおさらいすると、下記のとおり。
- 株価上昇の理由①:コロナ禍での業績の急拡大
- 株価上昇の理由②:コロナ明け後も、好調な業績と高配当を維持
- 株価下落の理由①:コンテナ船の運賃市況の悪化
- 株価下落の理由②:2022年末に景気後退が懸念された
- 日本郵船の2025年3月期の予想配当金は 260円。前期に比べて、120円の増配予定
日本郵船は子会社の日本貨物航空を、ANAホールディングス(9202)に売却すると発表しました。
航空貨物はコンテナ船と同様、市況による利益の変動幅が大きいことが売却理由のようです。
「陸・海・空」で総合物流企業を目指している日本郵船にとっては大きな決断ですが、経営上のリスクが減ったことはプラスだと考えます。
日本貨物航空の売却時期が、2024年7月から2025年3月に延期されました。今後も行方を見守っていきます。
これからも、日本郵船の動向はウォッチし続けますので、新しい動きがあれば記事を更新していきます!
※投資判断は、自己責任でお願いします。
今回は以上です。